居合道とは

足利時代の末期(永禄年間)奥州の住人、最上家の臣でありました林崎甚助源重信という方が、現在の山形県村山市林崎の林崎明神に父親の仇打ち祈願を参拝し抜刀術の妙技を得て、見事本懐を遂げこれを林崎夢想流と称したのが起源とされています。

私たち居合を学ぶものは、この林崎甚助源重信公を居合道中興の祖と仰ぎ、日々修練を積んでいます。

流祖神伝以来、歴代の宗家がこの妙技を引き継ぎ、幾多の流派、分派を生み日本全国に伝えられきましたが、その中でも正統七代宗家、長谷川主税助英信は、これらの技が精妙神妓を以って古今に卓越し、始祖以来の達人と言われました。また、古伝の技に独創性を加え、江戸時代享保の頃、無双直伝英信流(無雙直傳英信流)と改め呼称されるようになりました。

生するも、各々、無双直伝英信流たる根源は些かも変わることなく、歴代の宗家に連ねること正統第20代宗家 河野百練先生により全国の諸派、連盟を廻られ、技の統一がなされました。

無双直伝英信流正統会は、これを些かも変えることなく、今に至り、私たちは其の技前を修練し練磨に励んでいるところです。

そこで、正統第21代宗家 福井聖山先生は、居合道修行の目的を、“礼儀の精神を以って、相手の人格を尊重し、己が心を正し、且つ、ほとばしり出る武徳ににて、相手をして敵愾心を起こさせず、ひたすら尊敬の念を抱かしめ、以って天地万物を和する精神を養い、自己に与えられたる職業を転職としてこれに全霊を傾注し、且つ各自の責任を全うすることにある。これを居合道を学ぶ者の基本とされました。

これ即ち武士道精神たるゆえんであると考えます。

現在は450年にわたる歴史の中で伝えられし技前を、無形文化財 無双直伝英信流正統会、第22代宗家 池田隆聖昂先生を中心として、居合道の普及と武士道精神の継承に日々研鑽されているところです。

私たちの今は、すべに於いて、何かと裕福になり、利便性がもたらされ、結果、人間性や礼儀を忘れ勝ちになり、また、自己の責任感も薄れて来て、社会道徳の欠如が通常のごとく罷り通る時代となりつつある今日です。居合道の修行を通じて己を見つめる時間と空間を得ることで、人間として精神修行となれば居合道の修行も価値あるものと言えるのではないでしょうか。